日本のお米もそうですがフランスで、バゲットのように小麦粉だけで作られた白いパンを誰もが食べられるようになったのは第二次大戦以降のことで、遠い昔のことではありません。薄い褐色の皮で中が真っ白のパンは、他の穀物で作ったパンとは違い、軽く、風味豊かで美食家たちを魅了したそうです。そのため、長い間、ステータスシンボルとして裕福な人々だけに与えられた特権でした。
庶民は身分に応じて、ライ麦を混ぜた茶色いパン、大麦や混合麦で作った黒いパンを食べていました。飢饉や戦争が相次いだ時代においては、小麦の凶作でパンの色が黒くなると、人々は不安を募らせたように、日々のパンの質、大きさがそのまま時の景況として反映されていました。
たとえ他の食べ物が不足していない時でも、パンがなければ飢えで死んでしまうとさえ考えられてたほど、ルネサンス期以降、社会階層に問わず、パンは「最も当たり前で、最も価値を与えられた食品」となっていったそうです。